二重鉤括弧(『』)は、鉤括弧(「」)の中で鉤括弧を使いたいときに使用します。たとえば会話文の中でほかの人が喋った言葉を表す場合などです。
(例)
太郎は怒りに震える声を精一杯抑えながら言った。
「あのとき佐藤さんは『必ず約束は守るから、少しのあいだ辛抱してくれ』と言ったじゃないですか」
太郎は怒りに震える声を精一杯抑えながら言った。
「あのとき佐藤さんは『必ず約束は守るから、少しのあいだ辛抱してくれ』と言ったじゃないですか」
また、書名や雑誌名を示す場合にも使います。示したい作品が複数に分かれている場合は、作品全体に二重鉤括弧、個別の作品に鉤括弧を用います。
この二つの使い分けは明確に決められているわけではないので、作品全体や個別の作品といっても判断に迷うところがあると思います。どちらを使用しても問題ないのですが、文章を書く前に自分の中でルールを定めておき、表記を統一するようにしましょう。
二重鉤括弧に独自の意味を持たせない
二重鉤括弧を、複数の人間が同時に発話したことを表すのに使っている文章を見たことがありますが、これは誤用なので使用しないほうがいいです。複数の人が発話したなら、それを表す文章を会話文の直後に書き加えましょう。
×
写真の真ん中で微笑む男の姿を見て、太郎と花子は顔を見合わせて叫んだ。
『あのときの人だ!』
写真の真ん中で微笑む男の姿を見て、太郎と花子は顔を見合わせて叫んだ。
『あのときの人だ!』
○
写真の真ん中で微笑む男の姿を見て、太郎と花子は顔を見合わせた。
「あのときの人だ!」
二人は声を揃えて叫んだ。
写真の真ん中で微笑む男の姿を見て、太郎と花子は顔を見合わせた。
「あのときの人だ!」
二人は声を揃えて叫んだ。